映画 「ザ・ヒットマン」 @大阪ABCホール

ベストセラー小説を映画化した2003年のサスペンス作品。ベルギーアカデミー賞を受賞。 監督エリク・ヴァン・ローイ、主演ヤン・デクレール。2004年の大阪ヨーロッパ映画際で「アルツハイマー・ケース」として日本で初めて上映された。

 

アントワープの敏腕刑事ヴィンケとヴェルスタイフトはある売春組織を追跡していた。 一方、売春の証人を消すために雇われた暗殺者レダは、痕跡をほとんど残さない鮮やかな手口で標的を消し始める。しかし、次の標的の元に向かった彼は、それが12歳の少女だと知り、何もできずにその場を立ち去る。冷酷な暗殺者も過去の暗い記憶から子供を殺すことはできなかった。レダは任務を果たさなかったため、警察だけでなく組織からも追われることになってしまう。追っ手から逃れ、新たな標的に立ち向かう中、レダの記憶の回路は交錯し、過去の出来事や現実が悪夢となって彼を苦しめ、自分が少女を殺したという錯覚にすら陥る。自らの腕に電話番号や標的などを書き留める彼はアルツハイマーだった。熟練した腕と経験が彼の支えとなっていたが、病気の進行は思った以上に早く、ついに警察に身柄を確保される。捕まってもなお口を割らないレダは、犯罪組織を追うヴィン ケを指名し、事件解明への糸口を提示するが……。

人口600万人のフランドル地方で、75万人もの観客動員を記録した大ヒット作「ザ・ヒットマン」は、ベルギーでは珍しいサスペンス作品。 公開当時、欧州を震撼させた組織的な児童誘拐・殺人事件の裁判が行われていたことも動員数を増やした一因と言われる。ベストセラー小説をもとに、エリク・ ヴァン・ローイ監督は構想から10年の歳月をかけて本作を完成させた。レダを演じるのは、アカデミー賞外国語映画賞受賞作「キャラクター/孤独な人の肖像」(’97)にも主演したベルギーの名優ヤン・デクレール。重厚な演技で観客を魅了し、2003年フランドル国際映画祭で主演男優賞と観客賞を受賞した。刑事役のウェルナー・デスメットは、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作「エブリバディ・フェイマス」(’00)にも出演した期待の若手俳優。記憶の断片が入り乱れ、錯綜する現実と過去がデクレールの名演と映像で見事に表現されている。また、追う者と追われる者の息詰まる攻防とスピーディーな展開に片時も目が離せない。

2009年11月20日
場所 ABCホール