2013年9月2日

映画をめぐる美術-マルセル・ブロータースから始める


詩人として出発したベルギー出身の芸術家マルセル・ブロータース(Marcel Broodthaers 1924-1976)は、1964年頃から美術の領域に身を置き、言語とイメージの関係を扱ったオブジェや写真・短編映画の制作、また公開書簡や出版などの著述活動、さらに美術を取り巻く権威や制度を批判的に検証する虚構性に満ちたプロジェクトなど幅広い創作活動を展開し、戦後美術の転換期に大きな足跡を残しました。
ブロータースにとって映画は重要な表現方法のひとつであり考察対象でした。特にブロータースが映画を「書く」ための方法として位置づけたことは、これまで「視る」ことへ主に意識を傾けてきた映像表現に対して「読む」という視点を改めて強調した、と言えるでしょう。時にユーモアを交えながら言語とイメージの関係を根源的に問うブロータースの実践は、後進の美術家たちに大きな影響を与え続けており、特に写真やビデオ、インスタレーションの手法を用いた表現が急増した1990年代以降の美術動向を理解する上でも、有効な手がかりとなるように思えます。
主に1990年代後半以降、映像表現を手がける美術家たちに見出せるひとつの傾向として、映画の技術や理論、歴史に高い関心を持ち、過去の映画作品をさまざまな形で参照・解読するという創作手法が挙げられます。こうした傾向を視野に入れつつ、今回の展覧会では、ブロータースによる映画に関するテクストやプロジェクトを参照軸とし、そこから引き出される5つのテーマ――「Still / Moving」「音声と字幕」「アーカイヴ」「参照・引用」「映画のある場」――に即して、ベルギーのヴィジュアル・アーティスト、アナ・トーフ(Ana Torfs) をはじめ国際的に活躍する美術家13名によるフィルム、写真、ヴィデオ、インスタレーションなどの作品を通して、映画をめぐる美術家の多様な実践を紹介します。

会期:2013年9月7日(土) ~ 10月27日(日)
会場:京都国立近代美術館

アナ・トーフ(Ana Torfs)
1963年ベルギー生まれ。ルーヴェン大学にてコミュニケーション科学を専攻した後、シント=ルーカス・ブリュッセル美術大学にて映像学を学ぶ。テキスト/言語とイメージとの関係あるいは張力が、それに関連するビジュアル化、解釈および翻訳のすべてのプロセスと共に、トーフの作品で重要な役割を果たしている。インスタレーションでは、スライド投影、音響、写真、フィルムから、ゼログラフィー、オフセット印刷、ジャカード織、シルクスクリーンまで様々なメディアを用いて表現する。